性犯罪マップは閉鎖中です

Amyna アップデート:2025.10.01

最後の発信から約6ヶ月経ちました。根気よく待っていただいた支持者の皆様に長い沈黙をお詫びいたします。

この間、5名のボランティアスタッフの間で、今後の方向について様々な議論と技術的な試行錯誤を繰り返してきました。全員の意見が簡単に一致するわけはなく、それでも「子供たちを性犯罪から守る」という究極の目標に向かって、全員が納得できる方向性を探ってきました。一応の結論に達したので、アップデートすることにしました。その前にまず、個人情報保護委員会の4月3日の行政指導が出るまでの経緯を簡単に記しておきます。

個人情報保護委員会

2025年3月17日:個人情報保護委員会より、Amynaの代表者指名、所在地、電話番号、メールなど連絡窓口の確認。
2025年3月18日:Amynaから上記質問に回答。
2025年3月21日:個人情報保護委員会より、7項目の質問。26日までに回答を要する。
2025年3月26日:Amynaから上記質問に回答。
2025年3月26日:個人情報保護委員会より、5点につき再度質問。サポーター用マップへのログインの要望含む(4月1日の項参照)。28日までに回答を要する。
2025年3月28日:個人情報保護委員会より、上記5点についての回答の督促。
2025年3月29日:Amynaから回答期日を30日に延期を要請。
2025年3月29日:個人情報保護委員会より、上記延期を了承。
2025年3月31日(米国時間30日):Amynaから回答送信。
2025年3月31日:個人情報保護委員会より、受信の確認。追加として、Amynaユーザー登録数について質問。
2025年3月31日:Amynaからユーザー数について回答。
2025年4月1日:個人情報保護委員会より、サポーター用マップ閲覧のログイン成功の連絡。
2025年4月3日:個人情報保護委員会より、行政指導受けとる。

この間の個人情報保護委員会とのやりとりは終始礼儀をもった淡々としたものでした。私も国際公務員だったので、公務員は決められた法を執行するという仕事の基本は、国家公務員も同じだということがよく分かります。個人情報保護委員会の担当者の方が進める仕事、そのために必要な情報を集めていることは直ぐに分かりましたし、到達するであろう結論も容易に推定できました。それがこちらの望むものではなくても、大きな制度の歯車の一つである担当者と議論してもしょうがないことです。出来る限り正確な情報とこちらの意図を明確に伝えることはしましたが、それで結論が変わることは期待していませんでした。するべきことは、他のところにあります。

マスコミ

上記の個人情報保護委員会とのやりとりの間、マスコミ6社から、取材依頼や出演依頼が来てました。そのうち最初に来た一社とは電話で話しましたが、その社もその他の5社の依頼内容は残念なものでした。Amynaの究極の目標は、「子どもを性犯罪から守る」ということであるというのは、あちらこちらに書いているし、ロゴにまで入れています。しかし、そこに興味を示す社はありませんでした。話しているのは個人情報の一点張りです。まるで、子どもが性犯罪の餌食になるという深刻な事態がこの国に存在しないかのようです。

マスコミへの露出はAmynaの認知度を上げるためには有効なはずです。しかし、問題の本質を外したところで認知度が上がっても、「子どもを性犯罪から守る」という本来のAmynaの趣旨が歪められて逆効果です。そのため、とても残念なのですが、マスコミの取材は一切引き受けないことにしました。「子どもが性犯罪の犠牲になる」というのは、一過性の焦点のぼやけた大騒ぎで解決できるような問題ではないのです。それに真摯に向き合うジャーナリストの方が存在しないと言ってるのではなく、ただ今まで接触の機会がなかっただけだと思います。

ここでもう一度確認しておきたいのですが、私たちは、個人情報の保護と戦っているわけではないのです。「子どもを性犯罪から守る」ためには、何が必要なのか、そしてそれを実行するためにはどうすればいいのかを追求するのがAmynaの活動の趣旨です。そのために見直すべきことはたくさんあると考えています。このサイトにも列挙しているように、「現行法と制度」や、「被害者ケア」や、「再犯問題」や、「保護者による自衛」や、「子ども自身のSOS」などがそれですが、もっと他にもあるでしょう。例えば、ここに「公共と性」という文化的な問題を含める人もいるでしょう。性犯罪マップはそれらの根本的な見直しの道程に位置する一つのツールです。

問題を発見すること

国の法や制度を作るのは主権者である国民の意思です。それは直接的には国会議員の仕事であると言っても、彼らは国民の代表者に過ぎない。だから、国民はどんな国を作りたいかを政治家に伝える必要がある。どんな国を作りたいかを考えるためには、今この国がどんな状態であるかを知らなければ始まらない。

ある1日(ここでは、2025年9月29日)、ランダムに子どもが性被害にあった事件をマスメディアの報道をピックアップしたのが、下のような例です。実際の報道はもっと多く取り上げているでしょう。そして、実際の事件はもっと多くあるでしょう。

こういう事件を列挙すると、必ず「欧米に比べると少ない」という意見が出てきます。本当にそうなのでしょうか?そもそも他国と比較して多い/少ないの議論に意味があるのでしょうか?根本的に必要なことは、日本の国民が日本という国がどうあって欲しいかということではないでしょうか?

すべての問題の解決の第一歩は、問題を発見することです。問題が見えなければ、その問題を解決することは出来ない。今、日本の子ども達は大変な問題に直面していることを発見する/知るのは、大人の責任です。性犯罪マップはその補助ツールに過ぎません。

日本に本当に性犯罪は少ないのか?

5年半ほど前に、Newsweek日本版に『法廷で裁かれる性犯罪はごくわずか……法治国家とは思えない日本の実態』(2020年2月26日)という記事がありました。

この記事は、「一般市民には理解しがたい論理による、性犯罪の無罪判決」に言及することから始まっています。「酷い暴力・脅迫はなく、抵抗が困難だったとは言えない」「泥酔して眠り込んだ女性への行為については、同意があると被告が思い込んだ可能性があるので故意とは言えない」などです。

しかし、判決に至る以前に、”ほとんど”の性犯罪が裁判所に到達することがなく、闇に消えていく事情をこの記事は説明しています。(1)警察が被害届を受理して捜査に踏み切ること、(2)犯人が検挙されること、(3)検察が被疑者を起訴すること、という3つの段階を経なければ、いかなる性犯罪も裁判所には到達しません。

(1)2012年1月に法務総合研究所が実施した犯罪被害調査によると、警察が認知した(被害届を受理した)事件数は、推定被害者数の4.71%でしかない。つまり、性被害を受けたと100人が警察に駆け込んだとしても、受理されるのは、そのうち5人にも満たないということです。

(2)では、世界一優秀だと言われる日本の警察が、被害届を受理し、捜査した事件の何%が犯人検挙に至るかが次の関門です。その平均値は82.39%だから、推定被害者数の3.88%にまで減る(4.71% x 82.29%)。

(3)最後に、検挙された被疑者の検察による起訴率は、強姦罪被疑者の場合、49.56%です(法務省『検察統計』)。つまり、ここで推定被害者数の1.92%にまで減る(3.88% x 49.56%)。「”ほとんど”の性犯罪が裁判所に到達することがない」と書いたのは、そういうことです。性被害にあったと100人が警察に駆け込んだところで、裁判にまで到達出来るのは、そのうちたった2人にもならない

逆に言えば、性被害で裁判になっている数の少なくとも52倍の性被害者が存在するということです。しかも、ここに至る計算は、警察に駆け込んだ性被害者の数字から始まっている。現実には性被害にあっても警察に行かない人が暗数として存在している。他国と比較することに意味がないとしても、「欧米よりまし」という根拠は極めて怪しいものです。

(4)そして、最後の最後に、裁判での判決がある。ここで最初の問題に戻る。裁判にまで辿り着いた1.92%の事件に「一般市民には理解しがたい無罪判決」が下るという問題です。

「日本に性犯罪は少ない」という俗言の裏には、性加害の発生から裁判の判決まで重層的に広がる問題が存在します。これが子どもが被害者になる性加害になるとどうなることか。

性犯罪マップの今後

性犯罪マップの第一義的な意味は、現状を出来る限り多くの人が知ることが出来るツールとなるということです。自分がどんな所に住んでいるのか、あるいは行くのかを知るのは、誰にとっても最初の一歩でしょう。気候や土地の形状や文化や言語や教育や医療環境と共に治安も気になるはずです。たいていの情報は手に入るのに、性犯罪情報だけは手に入りにくいという実情があります。

それ以上のことが性犯罪マップに出来るとは現段階では思っていません。多くの人が、子どもに性加害をした人の名前や写真を公開すること、そして、性犯罪者にGPSをつけて位置を特定出来るようにすることなどを提案されています。実際、アメリカや韓国ではそれが政府によって実施されています。もちろん、その背景には、そのような処置の功罪をめぐって激しい議論がありました。究極的には、人権と人権の衝突をどう調整するかという難問に対する回答として、子どもの人権のために性犯罪者の人権を制限したことになります。性犯罪は、他の暴行とは異なり、「心の殺人」でもあり、一人の人間の一生を奪ったのと同等と考えると、性加害者の人権の制限(名前や写真の公開、居場所の特定など)はやむなしという結論に至ったのかもしれません。

これに関しては、他国の議論や、その政策の成功や失敗を研究して学ぶことは必要ですが、日本では日本国民が議論して決定するべきことです。性加害者の名前や写真を公開してでも、GPSで位置を特定してでも、守るべきものは子どもの一生であると日本国民が決断した時、それは開始出来るでしょう。そこで、政治家との協働が不可避的になると想定しています。Amyna自体は政治団体ではないので、そのための議論の構築のための資料・材料を蓄積するのがAmynaの役割だと考えています。

具体的には、現在の性犯罪マップから「個人とのひもずけ」が可能な要素を排除するように改良を試みてきましたが、不完全なものになるか、完全にするとマップとして成立しなくなるというジレンマがありました。結局、方針を完全に転換して、ヒートマップ形式を採用することにしました。現在は技術的な実験を繰り返しているところです。

これに伴い、ユーザー権限も大幅に変更する予定ですが、これもまだ検討中です。これに関して、一つ誤解があったので、説明させてください。マップには簡易版と詳細版があり、寄付していただいた方には詳細版にアクセス出来る設定にしていましたが、これは詳細版マップを「販売する」という意図ではありません。実際、値段を決めていたわけでなく、寄付額がいくらであってもアクセス出来る設定にしていました。こちらの説明が十分でなかったのでお詫びいたします。

ヒートマップが公開されるに至った場合、それは一種類だけになります。アクセスは一律に無料か一律に有料かになると思います。ご寄付に関しては、これからもお願いしたいですが、マップのアクセスとは独立したものであることをご了承お願いいたします。

もう一点、ボランティアの応募をたくさん頂き、大変有難うございました。個々にご返答出来なかったことを申し訳なく思っております。対応出来ていない大きな理由は、Amyna全体の方向について議論が続いていたことです。何をするのかを決定しなければ、ボランティアさんに頼めることも限られてきます。人手が要らないということではありません。今メンバーの方は全員フルタイムで仕事があり、なかなか時間が割けない状況です。ですから、何をやるのも少しずつ進めています。本当は当初の計画通り、クラウド・ファンディングで資金を集めて、それぞれの専門家を雇うというのが筋かもしれませんが、クラファンの準備自体にかなりの稼働が必要な上、方向性がはっきりしないまま、時間を割くわけにも行かず、ずるずると延期してきたというのが実態です。

以上、ここまで読んでいただき有難うございました。これからも応援よろしくお願いします。

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